【君は生きて……♪】- 2008/08/05 22:10
- なぜ・・・? 無境今日子は煙草を夜空にくねらせながら、唇をほとんど動かさずにたずねた。 目の前で世界遺産サカテカスの街並みが幾重も色を重ねているが、はるか上にある星々の方が無境今日子には近く感じる。 アキレス腱にピアスしている人初めて見たから・・・。 関線美千男は答えた。 さっき知り合ったばかりの男で、ケーブルカーの料金が片道なのか往復なのかと必死に英語で訴えていたら、流れるようなス…
【七夕な恋の色@吉祥寺】- 2008/07/08 10:59
- 日は落ちて、世の中のものが全て橙色に染め始まる。 段々と藍色に消えゆく井の頭公園を横目に、織本夕子は「金の猿」でビールを一口口に流した。 黄金色の泡液体が夕子の決して派手ではない朱色の唇を通り越す。 「お姉さん、こんな洒落たお店でおひとりですか?」 「つ〜か、遅いから!!」 夕子は星野達彦に言った。 悪いが、もうお姉さんという歳じゃない。 お姉さんのときは、隣で煙に焼き鳥の香りをウェイ…
【jane communication】- 2008/06/09 02:43
- 人生に感動と生きがいと愛を、 人が与えてくれるとはいえ、 誰にも会いたくない日がひょっこり現れる。 稲村奈保子は、その苗字からジェーンと呼ばれていた。 サザンの曲にも出てくる湘南の波の名前だ。 ジェーンは今日は携帯の電源を切って、 覚えられない大好きな横文字の作家の本を一冊持って、 街へ出かけた。 誰にも会いたくないが、 見ず知らずの人には会いたい。 ホント人間というのは複雑にで…
【三文字の短編的な恋愛】- 2008/06/03 17:59
- 朝方は空いている新宿のカフェでブラッドオレンジのSを飲んでいると、向かいの席に見知らぬ左利きの女の子がキャラメルマキアートを片手に座ってきてこう言う 「ねえ、私の短編を書いてよ」 「今会ったばかりの君をかい?」 「今会ったばかりのあなたによ」 「その名前を知らない君に短編を送るのかい?」 「長編は嫌いなの」 「そうか・・・」 チュッ ブラッドオレンジな唇がキャラメ…
【少女の探しもの】- 2008/05/18 09:58
- 女の子が道をうつ向きながら歩いている。 どうしたの?って声をかけると、お父さんを探しているのと女の子は答えた。 しばらくすると、いた!という女の子の声が聞こえた。 見ると、女の子は道に落ちていたボロボロのタバコを拾い、静かに抱いている。 小さな胸からゆっくりと煙が空へと上がっていった。





















