みんなの投稿
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わたしは天才だ――太宰治「水仙」
昭和十七年発表の作品。 わたしは天才だーーブルジョワの夫人・静子が、ある日とつぜん、家出した。 駆け出しの作家である“僕”のもとに、静子の夫・草田氏が訪ねてきたのは、その翌日だった...
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桜桃忌に読む、太宰治「如是我聞」
6月19日は桜桃忌。1948年の6月13日に玉川上水に入水した太宰治は、6月19日に遺体で発見された。奇しくも、39歳の誕生日。 あれから61年。今日は、61回目の桜桃忌であり、太...
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太宰治 生誕100周年記念!津軽金山焼製品や太宰治作品プレゼント!
『走れメロス』『津軽』『お伽草紙』『斜陽』『人間失格』などの作品を残した小説家・太宰治(1909年6月19日、青森県生まれ)は今年で生誕100周年を迎えます。アサヒビールでは太宰治の生誕100...
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フナになった娘――太宰治「魚服記」
太宰治の「晩年」の中で、いちばん好きだなあと思ったのは、「魚服記」。 美しい津軽の自然を背景に、民話を下敷きにした美しくも残酷な話。 炭焼きの父親と、滝のふもとで茶店の番...
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エリート家庭の子殺し――太宰治「日の出前」
太宰治の「日の出前」。新潮文庫「きりぎりす」に収録されているものを読んだ。昭和十七年に「花火」という題名で「文芸」十月号に発表された。実際にあった事件をもとに書かれた小説だという...
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病は気から――太宰治「皮膚と心」
小豆粒に似た吹き出物が乳房の下にできて、それがだんだん広がってゆく。痛くも痒くもないけれど、吹き出物を忌み嫌う「私」。皮膚にできた赤いぶつぶつは、どんどんひろがって、「こんなもの...
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屈折した愛――太宰治「畜犬談」
愛犬家は読まないほうがいいかもしれない。 犬が大嫌いな作家が飼い犬のポチを毒殺しようとする話なんだから。 引越しするのにじゃまだ、皮膚病にかかって醜い、という理由で… ...
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太宰治「黄金風景」
「わたし」は、子どものころ、お慶という女中をいじめていた。彼女が愚鈍だったから。いま、「わたし」は、家を追われ、貧乏と孤独と病を負い、筆一本にすがってやっと生きている。そこへ戸籍調...
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山の中に捨てたものは――太宰治「姥捨」
「姥捨」なんていうタイトルだから、老母を山へ捨てにいく話かと思ったら、夫婦心中の話だった。 太宰治は、生涯に四度の自殺未遂をしている。その三回目の心中未遂体験を元に書いた小説...
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しあわせの影――太宰治「燈篭」
言えば言うほど、人はわたしを信じてくれません。 太宰治「燈篭」の書き出しです。 「わたし」の名は、さき子。24歳、貧しい下駄屋のひとり娘。 昭和十二年発表の小説。 さき...
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おわかれ致します――太宰治「きりぎりす」
今日は、『桜桃忌』。久しぶりに太宰治を読みました。短編「きりぎりす」。 表題作というものは巻頭にくることが多いが、「きりぎりす」は、新潮文庫「きりぎりす」の前から九番目、後ろ...
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脳味噌の 酩酊先に 月下美人
たまには、内省的なことではなく、評論的なことでも書いてみようと思う。気持ち悪いと思われるのに拍車がかかるから。さて、俺は太宰治が好きなんだけれど、どういうところが好きかというと、...
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母を訪ねて――太宰治「津軽」②
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 「津軽」のクライマックスは、女中のたけとの再会シーンである。それまで落ち着いた紀行文だったのに、たけに会いに小泊の港町に来てから、ハラハラド...
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望郷ひとり旅――太宰治「津軽」①
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 津島修治(太宰の本名)は、津軽の金木で生まれた。生家は県下有数の大地主で、修治は十一人きょうだいの十番目、六男だった。 昭和十九年。出版社...
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恋と革命――太宰治「斜陽」②
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ かず子には、直治という弟がいる。麻薬中毒の作家志願。六年前のかず子の離婚は、直治の麻薬中毒が原因だった。直治は薬屋への支払いが滞り、他家へ嫁...
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わたしの心に棲む蝮――太宰治「斜陽」①
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 太宰治「斜陽」。 昭和二十二年。華族の特権を失くしたかず子とお母様の、破滅に向かう優雅な日常を、上品な女性の一人称で語る。 かず子とお母...
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恋に恋する乙女の心――太宰治「誰も知らぬ」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 四十一歳の安井夫人の独り語りの形式で書かれている。 「私」(安井夫人)が二十三歳の春のできごと。 「大震災のちょっと前」と書いてあるから、大正...
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作家の悲鳴――太宰治「春の盗賊」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ タイトルに惹かれて期待して読んだのに。 だって、面白そうでしょ「春の盗賊」って。 なのに、第一行目に、「あまり期待してお読みになる...
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なんともおめでたい――太宰治「花燭」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 年のころは、三十二、三、帝大経済化を中退して無為徒食、いい年をして故郷の実家からの仕送りで東京郊外に家を借りて暮らしている。 富裕な家の倅な...
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再生への強い願い――太宰治「新樹の言葉」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 昭和十四年の作品。 私小説のようだが、架空の物語だという。 「私」は、甲府で旅館に篭って小説を書いていた。 ある日、そこへ、郵便やさんが...
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空想の悲しき恋――太宰治「葉桜と魔笛」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 「葉桜と魔笛」は、昭和十四年の作品。 結核で若い人が死んでいくことが珍しくなかった時代。 美人薄命、なんて言ってね。 老婦人が語る、三十...
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歌声に恋をする――太宰治「I can speaku」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 太宰治には、麻薬中毒から必死に立ち直ろうとしていた時期がある。 「I can speak」は、そういうころの作品。 甲州御坂峠の天下茶屋に篭り、「...
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開戦の日、庶民は――太宰治「十二月八日」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 「新郎」で、開戦の日の、ある作家の異様な興奮を書いた太宰治は、その同じ筆で「十二月八日」を書いた。 お得意の女性の一人称で、冷静に歴史的な一...
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滅亡の予感と異様な興奮――太宰治「新郎」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 「新郎」と書いて、「はなむこと」と読む。 昭和十六年十二月八日、日米開戦の日、作家太宰治は、この小品を書いた。 一日一日をたっぷり生きて行く...
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幸福な家庭の肖像――太宰治「ろまん燈篭」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 七月、八月と怪談ばかり読んでいた。 二ヶ月ぶりに読んだ太宰治は、やっぱりいいと思った。 「ろまん燈籠」は、昭和十五年十二月から十六...
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勝負は生まれたときからついている――太宰治「庭」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 昭和二十年、東京の家も、甲府の妻の実家も、空襲で焼け出された太宰治は、妻と二人の子を連れて、青森の生家に疎開する。 実家の津島家は県下有...
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百円札の嘆き――太宰治「貨幣」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 小説「貨幣」は、昭和二十一年二月一日発行の「婦人朝日」に発表された。 百円札の目と心で、人間を書いた小説。 こんな話。 私は、778...
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お伽話には慈悲がある――太宰治「お伽草子」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 昭和二十年、高射砲の音が鳴り響く中、三十七歳の太宰治は、防空壕に避難して、五歳の娘に絵本を読んで聞かせた。 桃太郎、カチカチ山、舌切り雀…。...
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伸びていく方向に日が当たる――太宰治「パンドラの匣」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 敗戦直後の昭和二十年10月22日から二十一年1月7日にかけて、「河北新聞」に連載された新聞小説。 「健康道場」と名づけられた結核療養所に入所している二...
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時々は、でぇじにしてくんな――太宰治「おさん」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ おさんとは、心中天網島の主人公・紙屋治兵衛の女房の名前である。 治兵衛は、おさんという女房がありながら、遊女小春と恋仲になり、挙句の果てに心中...
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無頼の作家を愛する女――太宰治「ヴィヨンの妻」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ フランソワ・ヴィヨンは、15世紀フランスの詩人。 泥棒詩人として有名で、強盗や殺人まで犯したというから、その無頼ぶりは半端ではない。 「私...
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空腹の少女小説――太宰治「雪の夜の話」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 昭和十九年、太宰治が「少女の友」に発表した『雪の夜の話』。 少女の一人称で書かれた少女小説。 ちくま文庫「太宰治全集6」に収録されている...
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だざいのさいかく――太宰治「新釈諸国噺」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 西鶴は世界で一番偉い作家である、メリメ、モーパッサンも遠く及ばない、と、太宰治は、「新釈諸国噺」の凡例で書いている。 西鶴の全著作の中から...
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漂泊する孤独な魂――太宰治「右大臣実朝」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 宇月原晴明の「安徳天皇漂海記」が、太宰治の「右大臣実朝」へのオマージュであると知ったときから、この小説を読みたいと思っていた。 ちくま文庫太...
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かえりなんいざ――太宰治「帰去来」「故郷」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 太宰治は、1909(明治42)年、青森県北津軽郡金木村の大地主の家に生まれた。 11人きょうだいの六男、下から二番目。 本名津島修治。 「帰...
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青春への訣別――太宰治「東京八景」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 昭和十五年七月三日。 「私」は、伊豆の「戸数三十という感じの」山村を訪れた。そこで小説を書くために。 東京八景。 昭和五年に上京してか...
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くるくる回る白いパラソル――太宰治「満願」
太宰治 - livedoor Blog 共通テーマ 「満願」は、新潮文庫では「走れメロス」と同じ本に、「ダス・ゲマイネ」の次に載っている。 昭和十三年、太宰治二十九歳の時の作。 甲州御坂峠...
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んだすけまいね――太宰治「ダス・ゲマイネ」
どう理解していいのか、どう読めばいいのか、さっぱりわからない、という小説が、たまにある。 太宰治の「ダス・ゲマイネ」は、そういう作品。 この作品、「文芸春秋」昭和十年十月...
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月見草の心意気――太宰治「富嶽百景」
昭和13年初秋、太宰治は、「思いをあらたにする覚悟で」、旅に出た。 着いた先は、甲州御坂峠。 そこの天下茶屋の二階にしばらく落ち着くことになり、毎日、いやでも富士と真正面から向き...
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暴走する兄貴――太宰治「走れメロス」
書店で新潮文庫を見ていたら、「走れメロス」が目に留まり、買ってしまった。 むかしむかし、中学の国語の教科書で読んだことがある。 走れメロス 冒頭の一文は、数十年間、忘れた...